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2010.11.12

「知る権利」はそんなに偉いのか

 ビデオビデオって騒いでいるけど、テロ捜査の公安情報が警察から流出したことのほうがよっぽど問題なんじゃない? なんでそっちはもっと報道しないの? 朝、テレビを見ながらうちの奥さんが言っていた。確かにそう思う。

 ビデオを投稿した海上保安庁職員の行動を、中国人船長を放免した政府の理不尽な判断を糾弾する義憤によるものとして、理解を示す人々がいる。

 それはまだ納得できる部分があるが、どうにもおかしいと思うのは、海保職員の行動を、国民の「知る権利」に応えたものとして容認する声だ。

 知る権利とは「すべての情報を知る権利」なのか。

 今回のビデオ流出を、政府が隠蔽しようとした情報を暴いて「知る権利」に応えたものとして、ニューヨーク・タイムズが極秘報告書(ペンタゴン・ペーパーズ)をすっぱ抜いてベトナム戦争に関する米政府のウソを暴いた事件や、ワシントン・ポストのスクープがニクソン米大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件にたとえる向きもある。

 しかし、それはまったくおかしい。

 NYタイムズやワシントン・ポストの場合は、入手した情報が正確かどうか、公表することが国や特定の市民を傷つけはしないか、公益に資するかどうかなどをメディアがよくチェックと検討をし、問題ないと判断したうえで記事になった。

 1人の公務員が、たまたまアクセスできた公的な情報を自分だけの判断で外部にもらすのとは根本的に違う。

 これを、メディアが取材して得た情報と同じものとみなすのであれば、「知る権利」を理由にすれば、どんな情報も、個人の判断だけで、行政府や議会の意思とは関係なしに勝手に公開していいことになる。

 では、その情報が日本の政府や企業や市民にとって著しく不利なものだった場合はどう考えるのか。たとえば、今回流出したビデオの内容が中国漁船の正当性を示すもので、中国のハッカーが流出させたものだったらどうなのか。「政府が隠していたものを暴いた」という点ではまったく一緒だから、それでも「知る権利に応えた」と評価するのか。

 今回のビデオ流出を「知る権利」とからめて容認する人々は、漏洩した情報が「中国漁船の犯罪性を示す」という内容だったことからさかのぼって是非を判断している。

 知る権利は、「都合のいい情報だけを知る権利」ではない。情報を誰がどう公開するかは、「知る権利」だけを基準に軽々しく考えるべきではない。

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