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2010.10.15

日航パイロット整理解雇の不思議な言い草

 経営再建中の日本航空が、リストラクチャリングの一環として一部の機長と副操縦士に強制的に退職を迫り始めたというニュースで、家族が困っているという記事を朝日新聞が先週載せていた。

乗務予定が突然白紙 育児・ローン…日航パイロット困惑
http://www.asahi.com/special/jal/TKY201010070571.html

 日航の整理解雇の人選基準に「(当該年度の)病気欠勤合計41日以上」「過去2年5カ月で合計81日以上の病気欠勤」というのがあり、今年に入って怪我で数カ月休んだ副操縦士や、風邪や腰痛で長く休んだ副操縦士が、乗務予定が真っ白のスケジュールをいきなり突きつけられたのだという。

 記事によると、パイロットは事故防止のため、体調が少しでもすぐれないと病気欠勤とする。風邪薬を飲んだだけでも、自己申告で休む。「こんなやり方では風邪を引いても誰も休まなくなり、安全に問題が出るだろう」と、退職勧奨の対象となった副操縦士が言っている。そういう考え方をすること自体が、この会社がいかに病んでいるかを物語っている。

 安全に直結すればこそ、病気欠勤が他の人より多い=体調の自己管理を怠っているとシビアに見るのは自然なことだろう。クビになりたくないからウソをつく、のではなく、それならなるべく風邪を引かないよう今まで以上に体調管理をしっかりしよう、という思考になぜならないのか。

 『JAL崩壊――ある客室乗務員の告白』(文春新書)によれば、パイロットの生涯年収はおよそ9億円。一般的な会社員の3~4倍だ。高度にコンピュータ化された現在の航空機では、離着陸時や気流が不安定なとき以外は、パイロットはやることもそれほどなく、新聞や週刊誌を読んで過ごしている者も多いという。

 ただ、12カ月で41日以上、29カ月で81日以上という基準が妥当なのかどうかはわからない。退職してもらう人数を先に弾いてから「41」「81」という数字を割り出した可能性もある。

 そもそも、こんなラフなやり方で実質的な解雇がさくさく進んで大丈夫なのか。整理解雇というパンドラの箱を開けてしまうようで恐ろしい。

 と、突っ込みどころはいくつもあった記事なのだが、もう1つ気になったのは次の部分。

「子どもを抱えた対象者は家計への影響が気にかかる。

 3人の子どもがいる副操縦士(51)は、娘が大学受験の願書を出す直前、白紙の乗務スケジュールを受け取った。娘からは、「願書に、お父さんの職業を『日本航空』と書いていいの」と聞かれた。言葉に窮した。」

「ねえ、お父さん、『日本航空』でいいの?」
「全日空と書いておきなさい」
「…………」
「冗談だよ。パイロットって書けばいいじゃないか」
「お父さん、まだパイロットじゃないじゃない。コーパイでしょ」
「そんな細かい違い、普通の人にはわからないだろ。パイロットでいいよ」
「昔は、友だちに『お父さんの仕事、何?』って聞かれたら、パイロットとか飛行機の操縦士じゃなくて、JALって答えなさいっていつも言ってたくせに」
「うるさいな。いいから適当に書いておきなさい」
「適当って何よ」
「だから、その、輸送関係とか」
「輸送関係? 台車押しながら走り回っている宅配便のドライバーさんみたいね」
「そうか? うーん、それはちょっとイヤかな」
「何それ。宅配便バカにしてるでしょ。失礼じゃない」
「そ、そんなことないけど…」
「バカにしてるわよ。わかってるの? 今はもう、JALよりクロネコやサガワのほうが優良企業なのよ」
「優良の基準って何だ。クロネコってあれだろ、こないだお中元の頃に荷物が届かなくなった会社だろ」
「それはゆうパック。親方日の丸が抜けない会社。JALと一緒よ」
「そんな言い方しなくたって…なあ、母さん」
「………会社員って書いておけばいいんじゃないの」

 などという会話が記事に出てくる家庭で交わされたかどうかはわからないが、そもそも大学の願書には「父親の職業」という欄があり、そこにはいわゆる職業ではなく、実際の会社の名前を書くのが普通なのだろうか。

 そんなことを書かせる大学も、何の突っ込みも入れずにスルーして記事に書いてしまう新聞も、普通ではないと思うのだが。

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